タイガーマスク基金 インタビュー

タイガーマスク基金 インタビュー#8
子どものいいところを見つけ、企業にマッチングさせたい!

株式会社フェアスタート代表取締役社長
NPO法人フェアスタートサポート代表理事
永岡鉄平さん

1981年横浜市出身。大学卒業後、リクルートで求人広告の営業を2年間勤めた後、大学院生専門の就職支援会社の立ち上げに参画。起業準備期間に、児童養護施設の子どもたちに出会い、児童養護施設などの子どもたち・若者たちの就職支援を行う、株式会社フェアスタートを2011年8月に起業。2013年1月には、NPO法人フェアスタートサポートも設立。

 

まずは起業したかった

大学時代から、起業したいと思っていました。学生時代は、お金稼ぎに目が向いていたと思います(笑)。社会人になってから、社会への貢献も意識しながら目の前のことを一生懸命にやろうという意識が芽生えたような気がします。

 

リクルートで求人広告の営業をしているとき、大学院生がもっと民間企業就職の市場で注目され、もっと社会に参画して欲しいという問題意識を持っている方と意気投合。大学院生専門の就職支援会社の立ち上げに、実戦部隊として関わりました。

 

これはリクルートで働き始めて2年目のこと。仕事も少しずつ見えてきて、このまま会社にいたら、しばらく営業だろうなとか、独立したいなと考え始めているときでした。リクルートという看板を背負って働いていましたから、働きやすかったわけですが、看板のないところで勝負したいという気持ちが芽生えていた時期でした。

 

大学院生専門の就職支援会社で働く条件として私が出したのは、「何でもやらせてくれ」でした。大きな会社では、営業など、個別の仕事の担当になってしまいますから、いろいろなポジションを経験したかったんです。

 

 

児童養護施設の子どもたちのイメージと、実情とのギャップ

フェアスタート立ち上げのきっかけは、「中小企業はやる気のある人が採れない」、一方で「働きたくない若者」「働きたくても働けない若者がいる」という問題意識でした。

 

なぜそのような若者が生まれたのかというところを探るべく、リサーチを続けているうちに、“「なくそう!子どもの貧困」全国ネットワーク”という団体に出会いました。2009年のことです。

 

子ども虐待や児童養護施設の話を聞き、とても衝撃を受けたのを覚えています。その後、児童養護施設にボランティアに行きました。面接を受けて学習ボランティアを始めました。私の担当は当時小学校4年生、スポーツが大好きな男の子。1カ月に1回のボランティアでしたが、行けば喜んでくれていたようでした。誕生日もいろいろ考えて、ルービックキューブをプレゼントしました。

 

シンポジウムなどでは、児童養護施設の子どもたちの暗い側面がたくさん語られていたのですが、私がボランティアに行って出会う子どもたちはみんな笑顔だし、元気だったんですよね。児童養護施設の高校生の子はアルバイトを頑張っていたり、モチベーションもちゃんと持っているんですよ。今まで聞いていた、思っていた偏見のある世界とは、違うんじゃないかなと思いました。

 

こんなにちゃんとがんばれる子どもたちがいるんなら、じゃあ、中小企業で欲しがるんじゃないかなという風に思ったんですよ。それが株式会社フェアスタートの事業プランのきっかけになっています。

 

内閣府の地域社会雇用創造事業の第1回社会企業プランコンテストというのがあり、そのプランをプレゼンテーションし、最優秀賞を受賞しました。そして、2011年8月に株式会社フェアスタートを起業しました。

 

 

 

やる気のある人材が欲しい企業と、働きたい若者のマッチング

フェアスタートのメイン事業は人材紹介です。


正社員として斡旋し、3カ月の試用期間を経て、本採用になったら企業側から人材紹介料を受け取るという形になっています。流れは、企業から求人がある→施設に求人を流す→施設が閲覧して推薦→フェアスタートが本人と面接を行う→求人内容と本人の希望や適性が一致していたら企業に紹介するということです。

 

若者の家庭環境によって、若者が仕事に就いた後、親が本人の足を引っ張るなんていうことがあっては困るので、どの程度親が関わりを持ってくるのか、その辺も含めて、確認やマッチングを進めます。


児童養護施設の子どもたちを対象にしていますから、一般の就職人口から考えると母数は少ないですが、施設を出た若者たちも含めると、リソースは相当数あると思っています。ただし、特に施設を出た若者たちと数多くコンタクトを取るのがまだまだ難しいことから、十分な人材を確保できずマッチングの即効性が弱いため、企業にすぐに人材が欲しいと言われても、全部は応えられないのが現状です。中長期的なスパンで良い人材がいたら随時採用したいという企業には向いていると思います。

 

東京都社会福祉行議会児童部会リービングケア委員会などでも、広報させていただいています。

 

児童養護施設から「こういう子がいるのですが、どこかいい企業はないですか?」という問い合わせをいただくこともあり、施設からの依頼も増えています。しかし、施設ごとの温度差もあり、自分の施設には、そのような就職サポートは必要ないというお考えのところもあり、難しいですね。

 

児童養護施設を出た後の子どものアフターケア自体は努力義務という感じですから、もちろんアフターケアまで頑張っていらっしゃる施設もありますが、私たち民間だからこそ、就職した後のサポートなど、できることがあると思っています。

 

>個人の得意や想いを引き出し、企業に引き合わせる

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