タイガーマスク基金 インタビュー

タイガーマスク基金 インタビュー#9
自立支援コーディネーターによる児童養護施設の支援標準化を

「自立支援コーディネーター」として、児童養護施設における支援を標準化していく

1999年に「リービングケア委員会」が立ち上がり、私は2002年から加わっています。児童養護施設や自立援助ホームの職員が集まり、社会へ出て行く子どもたちの自立支援について、学んだり、情報交換をする場です。


とりわけ義務教育を終えた子どもへの支援は、施設ごとで考え方や対応が大きく違っています。たとえば公立高校に合格できなければ、あるいは入学しても中退すれば直ちに就労自立が求められる施設があります。一方で、そうした子どもたちにも私立高校も含めて多様な就学先を確保し、その先の大学等進学も基本に支援している施設もあります。こうした「違い」は、子どもたちの人生そのものに大きく影響しています。


子どもたちは施設に入るか否か、どの施設に入るかも、実質的には選択できません。そんな中で、こうした「違い」を容認してはならないと考えています。そこで必要なのが、「標準化」という考え方です。「標準化」とは、理念や方法、手続きを共有して、子どもたちの自己選択・自己決定を尊重するためのものです。決して、結果を同一、均一にするというものではありません。


昨年度から東京都の児童養護施設で配置されている「自立支援コーディネーター」は、この「標準化」を担うことが期待されています。まだ二年目ということもあり、各コーディネーターはまだまだ手探りの中での仕事ではありますが。具体的な仕事としては、ひとりひとりの子どもの自立支援計画を、ケア職員と共に立てること、大学等の進学希望者に対して奨学金の情報提供をはじめとしたサポートをすること、退所者の状況を把握して必要なアフターケアが行えるよう調整することなどがあります。


「自立支援コーディネーター」が、専門職として機能するためには、独立性(ケア業務からはずれること)、資質(対人援助の基本理念を理解して実践に活かせること)、方針(業務に関する基本方針が共有されていること)、組織化(バラバラに動くのではなく、横の連携や情報共有ができること)、教育(独自の教育・研修の仕組みがあること)といった要素が必要です。

 

「自立支援コーディネーター」はケアワーカー(保育士的な業務)とは異なる、ソーシャルワーカーとしての専門性が求められています。

 

 

正確で具体的な情報提供が、子どもの自立支援の選択肢を広げる

「自立支援コーディネーター」は適切に制度や社会資源を把握して、子どもたちの最善の利益に繋がる情報提供をしていく必要があります。情報が偏っていたり、適切に伝えられなくて、子どもが不利益を被るようなことがあってはならないと思っています。

 

この仕事の特徴は、背中越しに子どもを感じながら、外に向いて仕事をすること。新しい情報や資源を施設につなげられるクリエイティブな仕事だと感じています。難しさは、日々研鑽していないといけないということですね。どんどん制度や社会資源が変わっていきますから、経験年数を積むだけでなく、自分自身の意識をとぎすませていることが大切です。自分が停滞していたら、子どもたちの活き場所を狭めてしまうというプレッシャーもありますね。

 

 

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