勉強会・セミナー

タイガーマスク基金 勉強会#1
知っていますか?児童養護施設~児童養護施設の現状と問題点

 

タイガーマスク基金第1回勉強会を2011年4月25日に行いました。平日夜にもかかわらず、約50人の方がご参加くださいました。今回の勉強会は、児童養護施設の一番基本的な現状について学ぶことが目的でした。

 

福田会東京本院施設長 中村久美さんが、児童養護施設を含む国の「社会的養護」の説明、児童養護施設の種類や数について資料とともに説明くださいました。

 

児童養護施設の種類や数はこちらで詳細をご覧いただけます。
(全国社会福祉協議会まとめ) http://www.zenyokyo.gr.jp/index.htm
(厚生労働省のまとめ) http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/69-19.html
法改正もありますし、状況は変わっていきます。タイガーマスク基金でも随時現状をまとめてこのウェブサイトを更新していきたいと思います。

 

勉強会では、福田会の施設長として、施設の情報などとは別に現場から見えることをお話しくださいました。主な内容です。

 

(福田会東京本院施設長 中村久美さんの基調講演)

 

■児童養護施設はどんなところ?

児童養護施設数: 579か所(平成22年調べ)
児童養護施設で生活する子どもの数:全国31,000人以上

 

児童養護施設は、基本的に2歳~18歳までの子どもが暮らす。児童福祉法の改正により現在は0歳から児童養護施設に入所できるようになっているが実際には0歳児と3歳児以上では必要な設備、職員数、職員の資格が違っていて運営には課題も多い。

 

・企業が児童養護に取り組むケースの紹介

京セラの活動 http://www.kyocera.co.jp/inamori/contribution/04.html
SBIホールディング 職員研修などの支援も

http://www.sbigroup.co.jp/zaidan/program/application.html
ビックカメラ創立者で会長が立ち上げた社会福祉法人が運営西台こども館

http://www.shouhaku.jp/content.html 

 

・児童養護施設の課題に積極的に取り組む施設の紹介

年齢によって施設を変わらなければならない、兄弟が別々の施設に入る、などの問題を調整したり、親支援を徹底的に行って家族再統合に力を入れている施設
至誠大地の家 http://shiseigakuen.org/ 

 

 

■子ども達はどうやって(どうして)施設にやってくるの?

昔は孤児院のイメージが強かった。母の病気、離婚して母が経済的に生活を立て直すまで、または親が刑務所に入っているためというケースもあった。今は、「子どもの養育が困難であるのではないか」と相談が入り、状況確認の上、必要な場合は児童相談所に一旦保護。その後、家に帰す、地域で見守る、などの方法を考え、子どもの意見も聞くなどしながら入所を決める。虐待が原因で、特に命の危険を心配されるほどひどい虐待を受け、学校などから児童相談所に相談が入り、制服を着替えることもなく、ある日そのまま施設に入るというケースも大変増えている。

 

 

■施設で働く人達ってどんな人?

職員の資格は、教員免許、保育士免許、大学で4年間社会福祉や心理学を学んだ者、または施設職員として2年間働くと得られる。大学院修了など高学歴の人が最近は増えているが、それだけ専門性が高く、子どもの支援が難しくなっているのも事実。

 

 

■施設の生活ってどんなの?

全国の施設によってさまざま。7割以上は大舎制で、大食堂での食事や勉強をする部屋が別に用意されていたり、就寝場所が大きい部屋である事が多い。中舎制は13~19人、小舎制でも12人までの児童が住む。専門里親やNPOが地域の中の一般住宅で6名から5名の要保護児童を養育する「ファミリーホーム」制度もある。

 

 

■施設に入っていて困る事ってなあに?

子ども6人に対して職員一人が全国的な配置基準。一方で夜間の対応、病院の付き添い、学校の個人面談、子どものケアなど現実には24時間体制なので配置基準の3倍は必要。また職員が住み込みでない限り、子どもを送り出す職員と迎え入れる職員が違うことが多い。そのため学校連絡の引き継ぎや、担任などとの連絡が、うまくいかないことも多い。子どもの年齢によって必要職員数も変わるし、雇用が不安定な非常勤を雇わなくてはいけないなどが運営の課題。

 

監査を含め、日々見学者も多い。自分たちの生活や自分の部屋を勝手に見る人がいるというのは、子どもたちが家で暮らしていたら、考えられない行為である。子どもは、可哀想と言われたり、そのような目で見られることを一番嫌う。施設を理解していただきたいという気持ちと、子どもの生活の場所に入ったり、覗いて欲しくないという気持ちもあり、施設側としても悩むところである。

 

 

■施設を出た後困る事ってなあに?

児童養護施設に入所する子どもの約2割にはさまざまな障害がある。発達障害も増えている。児童養護施設の子どもたちの障害は、生まれ持った障害もあるが、小さい時に適切な養育を受けていないことが原因のことも少なくない。たとえば知的な障害を持った子が親になり、適切な養育を行えないためにとか、その子どもが施設に預けられるというような負の連鎖も少なくない。
卒園後頼れるところが少なく、自分の面倒を見てくれた職員が公立なら転勤でいない場合などもあり施設に相談しづらいこともある。

 

子どもの心には埋められないものが多すぎる、というお話が心に残りました。参観日ひとつにしても親ではなく職員がやってくる。子どもがもし物を盗ったり人を傷つけたりした場合、子どもにまったく責任がないとは言えないけれども、広く考えると大方は大人に原因があることも理解して欲しい。子どもがなぜそのような行動をしたのか、なぜ自分を押さえられず犯罪を犯してしまったのかと考えると、親や周囲の大人からの関わりに問題がある場合がとても多い、というメッセージでした。また、「全国の児童養護施設には環境や設備、ソフト面などでも施設ごとに大きな差があり、子ども一人ひとりもそれぞれに違っているということをぜひ知っていただきたいです」という中村さんの言葉はとても強く、タイガーマスク基金でも確かに受け止めなければいけないと思いました。

 

(質疑応答も行われました。)

(梶原一騎ご夫人、高森篤子さんからのメッセージ)

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